2014年5月18日日曜日

S先生へ

小学生の時の算数の時間、先生がみんなにこのように言った
【暗算って知ってる?今から○○君に暗算してもらうから
端からみんなの家族の人数言って行ってね】
(○○くんとはそろばん塾に通っていて暗算か得意な友達)


端から元気な声が聞こえ始めた
3人!6人!4人!


○○くんは机の上に空想のそろばんを描き、
器用な指さばきでそろばんの玉をはじくしぐさをしていた。


僕んちは幼い頃に両親が離婚し、母と姉と、そして僕の3人家族。


僕はリズムよく進む皆の声に負けないように大きい声を出す心の準備をしていた。
そして3人!って言うのを間違えないように・・・


ようやく僕の順番が回ってきた


僕は間違えないように、そして大きい声で○○くんに聞こえるように
お腹に思いっきり力を入れてこう言った


【3人】 今まで出したことが無いような大声、力を入れ過ぎて少し上ずったような声。
僕は僕の役目が終わった事に安堵し、そして一気に冷や汗が出てきた。


僕の後に数人が家族の人数を言い、そしてそれは終わった。


すると先生がこんな事を言い出した
【おい、△△なんで嘘言ったの?】
(△△とは僕の事)


僕は唖然とした
先生だって僕んちの家族構成知ってるでしょ?家庭訪問の時だって言ったじゃない。
僕は心の中でそうつぶやいた。


先生が前に来るようにと僕を促し、みんなの前に立たされてもう一度言われた
【なんで嘘ついたの?】


僕はなんて言えば良いのか解らなかった。
ただただ涙が溢れ、頭が熱くなってきた
そして眩暈がしてきた。
この場から逃げたい、もう家に帰りたい
でも何も出来なかった。
泣きすぎて呼吸が苦しくなって僕はその場で倒れてしまった。


あの時の事は未だ鮮明に覚えているし、時たまフラッシュバックのような現象が起きる。


先生に聞きたい、あの時の心意は何だったのかと。

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